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ティェンタオの自由訳漢詩 2283

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 南宋36ー姜夔
    疏 影                疏 影       (下片十一句)

  猶記深宮旧事     猶(な)お記す  深宮(しんきゅう)の旧事(きゅうじ)を
  那人正睡裏      那(か)の人   正(まさ)に睡裏(すいり)にありしとき
  飛近蛾緑        飛んで蛾緑(がりょく)に近づきしを
  莫似春風        似る莫(なか)れ  春風(しゅんぷう)の
  不管盈盈        盈盈(えいえい)たるに管(かん)せざりしに
  早与安排金屋     早く与(ため)に金屋(きんおく)を安排(あんばい)せよ
  還教一片随波去   還(ま)た一片をして波に随って去らしめ
  又卻怨玉龍哀曲   又(ま)た却(かえ)って玉龍(ぎょくりゅう)の哀曲(あいきょく)を怨(うら)む
  等恁時         恁(そ)の時を等(ま)って
  重覓幽香        重ねて幽香(ゆうこう)を覓(たず)ぬれば
  已入小窗横副     已(すで)に小窓(しょうそう)の横副(おうふく)に入れり

  ⊂訳⊃
          また思い出す  王宮での古い話を
          あの姫君が   眠っていたとき
          梅の花びらが  蛾眉の黛の近くに飛んできた
          春風よ       むやみに花を吹き散らすではない
          それよりも     はやく立派な宮殿をつくり
          なぜ大切に    守ってあげなかったのか
          また一ひらが  波のまにまに流れてゆき
          玉龍の笛が   哀しい音色で送っているのが怨めしい
          花の散るときになって
          ふたたびあの  奥深い香りを尋ねようとしたら
          すでに小窓の上の  横額のなかにはいっていた


 ⊂ものがたり⊃ 下片も故事が援用されています。「深宮の旧事」は南朝宋の武帝の娘寿陽公主が人日(正月七日)に含章殿の軒先で眠っていると、梅の花が公主の額に落ちて張りついたまま三日間も落ちませんでした。詞では「蛾緑に近づき」と書いてあり、梅花粧のおこりを伝える説話です。
 七句目の「金屋」は漢の武帝が幼いとき、のちに皇后となる阿嬌という幼女をみて、もしも阿嬌を妻にすることができたなら、美しい御殿を建てて住まわせようといったという「金屋蔵嬌」の故事をさします。また、つぎの二句もなんらかの故事を踏まえているかもしれませんが不明です。「玉龍」は笛の名で、笛の名曲に「梅花落」があるのを踏まえるものでしょう。
 結びの三句は花の散るときになって、ふたたびあの「幽香」(微かな香り)を訪ねようとしたら、梅の花は小窓のうえに架かっている「横副」(横額)のなかに納まっていた。つまり絵に描かれていたというのです。
 范成大は姜夔の二詞の出来栄えに感心して、自家の歌姫で小紅(しょうこう)という美女を姜夔に贈ったという話が伝わっています。

    ※ すでに初唐は、魏徴(1861ー1862)、駱賓王(1877)、劉希夷(1879ー1882)、
       陳子昂(1887・1889)しか残していません。
       南宋をつづけるため、以下の各時代についても重要でない作品は逐次
       削除する予定です。 

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